「海事セキュリティに関する専門家による座談会」

「海事セキュリティに関する専門家による座談会」を開催


日本船舶技術研究協会ではこのほど、「海事分野におけるセキュリティ対策の問題点と今後進むべき方向について」をテーマとして、「海事セキュリティに関する専門家による座談会」を開催しました。
 
    船技協はこれまで日本財団の助成事業として海事セキュリティに関する調査・研究を行い、IMO(国際海事機関)、ISO(国際標準化機構)などの規則・基準の策定に積極的に関わっています。ISOの国内審議団体としてTC8(船舶及び海洋技術専門委員会)セキュリティ分科会を設置し、最適なセキュリティ規格の構築に取り組んでいます。
    また、現在ISOにおいてサプライチェーン・セキュリティに関する国際規格としてISO28000シリーズの審議が山場を迎えており、この機会を捉え、ISO28000シリーズは何か、サプライチェーン・セキュリティがどう変わるのか、関係当事者にどういった影響を与えるのか、などについて、海事セキュリティの専門家にお集まりいただきお話をいただきました。
    司会を日本船舶技術研究協会の矢萩強志常務理事が務め、専門家として、日本機械輸出組合の橋本弘二部会・貿易業務グループリーダー、神戸市みなと総局振興部の中村光男主幹(ポートセールス担当課長)、日本郵船安全環境グループ危機管理チームの樋口久也チーム長、海上技術安全研究所運航・システム部門の太田進上席研究員、東京海洋大学海洋工学部流通情報工学科の渡邉豊教授にご出席いただきました。
座談会の模様は、2月7~9日発行の海事プレス誌に紹介されました。(対談の模様は別添

(解説)海事セキュリティについて

1.海事分野におけるセキュリティ強化の動向
    米国における9・11以降、海事分野においても各方面で保安対策が進められてきました。IMOにおいては、2004年7月1日にSOLAS条約第XI-2章及びISPS Code(船舶及び港湾施設の保安のための国際コード)が発効し新たな保安制度が導入されましたが、既にこの条約の実施に係る各種問題点が指摘されており今後問題点を調査し必要な修正を行うことが検討されています。
    また、海事保安をめぐる国際的な動きはIMOに限らず広くダイナミックに展開しています。米国はC-TPAT、バイオテロリズム法等独自の海事保安強化を図っているほか、世界税関機構(WCO)は国際サプライチェーン・セキュリティ及び貿易円滑化のためのスタンダードを策定しつつあります。
    さらに、ISOにおいてもコンテナ物流の急増を背景として国際的なサプライチェーンのセキュリティを確保する観点から一連の保安管理システム規格が審議中であり2007年には順次発行する見込みです。

2.ISO28000シリーズ
    サプライチェーン・セキュリティに関する国際規格は、ISO/TC8が2005年ごろから米国の提案を受け、開発を進めてきました。生産地から最終消費者までのサプライチェーンとすべての輸送手段を対象としており、全体としてのセキュリティ・レベルの向上・改善と貿易の円滑化を図るのが目的です。
ISO28000シリーズのISO28000、28001、28003、28004はサプライチェーン全体、すべての輸送形態、あらゆる貨物を対象とするセキュリティ規格で、すでにPAS(公開仕様書)として発行されており、現在、国際規格策定の最終段階に入っています。中核となるISO28000及び28004のDIS(国際規格案)投票が終了して、両規格とも反対0で承認され、ISO28001の投票期限は6月18日、ISO28003は5月7日であり、合計4本が今年中にも国際規格(IS)として発行される見込みとなりました。また、海事港湾施設の保安評価と保安計画の作成に関する「ISO20858」も来年初めにも国際規格になると予測されます
ISO28000シリーズと20858の概要は別紙1国際規格(IS)策定のスケジュールは別紙2参照。

    ISOの規格策定作業は、①新規作業提案②WD(作業原案)の検討③CD(委員会原案)の検討④DISの検討⑤FDIS(最終国際規格原案)の検討⑥国際規格の発行―という手順ですすめられます。

PAS(公開仕様書)は作業グループ内のコンセンサスを示す規範文書として、各国による投票(Pメンバーの過半数による賛成)で承認され発行されるものです。正式な国際規格ではなく、広く一般に公開し試用することでブラッシュアップを図る目的で発行されるものですが、ドバイ・ポーツ・ワールドは昨年9月、ISO/PAS28000に準拠した認証をLRQA(ロイド・レジスター・クォリティ・アシュアランス)から受けました。また、米国のスターバックスコーヒー社はサプライチェーンのセキュリティを改善するためISO/PAS28001を採用しています。