第1回舶用品標準化推進協議会/舶用品標準化セミナーを開催しました


「第1回舶用品標準化推進協議会/舶用品標準化セミナー」の開催報告

[当協会HP会員専用コーナーから講演資料を見ることができます]


sora2007年9月21日(金)13:30~17:00に大阪ガーデンパレス桐の間にて、「第1回舶用品標準化推進協議会/舶用品標準化セミナー」を開催しました。
 この舶用品標準化推進協議会は、JIS マーク表示許可認定工場の経営者相互の情報交換やJIS製品を中心とした標準化の推進による品質向上等を目的に2005年度に発足したJISメーカー分科会を舶用製品の標準化活動の強化・推進を目的に発展的に改組するとともに、舶用品製造業者の経営者レベルの方を主要構成メンバーとして増員を図り、2007年度に誕生しました。 協議会長は、当協会の理事である藤山昭一氏[㈱鷹取製作所代表取締役会長]が就任しています。 
 今回の協議会は、その第1回目の会合として、委員各位並びに関係の皆様において工業標準化に対する基本概念、重要性等についてより、理解を深めていただき共通の認識のもとで各社における社内標準化活動の推進や国際標準を中心とした規格の企業活動への活用等を通じて標準化活動の拡大並びに当協議会の発展を目的に標準化セミナーとして開催したものです。 
セミナー当日は、協議会メンバーを中心に関係官庁、海事関係の大学関係者並びに造船会社から61名の参加をいただきました。 ここに第1回の舶用品標準化推進協議会が無事終了したことにつきまして国土交通省、経済産業省、講師各位並びに関係各位のご協力に対してまして御礼申し上げます。 
 下記のとおり同協議会/標準化セミナーの概要を記載いたしますので、ご覧下さい。

  開会に当たり、藤山昭一 舶用品標準化推進協議会長並びに当協会常務理事の矢萩強志より、当協議会の設立の主旨、標準化セミナー開催に当たっての関係各位のご協力並びに講師の方々に対する謝辞が述べられた後、講演に移りました。
  講演は、本会の船舶関係標準化事業に関連した我が国の標準化政策の現状、船舶技術分野における標準化活動及び同事業に関連した産業界の国際標準化に係わる現状報告やエピソードなどについて関係官庁をはじめとして国際標準化に携わる学識経験者(有識者含む。)、舶用品製造業者の代表者から次の五つのテーマについて講演が行われました。 

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藤山協議会長の挨拶
矢萩常務理事の挨拶

テーマ1.国際標準化の戦略的推進に向けて(国際標準化の動向と我が国の活動)
森野 芳通 氏 経済産業省 産業技術環境局 産業基盤標準化推進室
 
 
【講演の主旨】
soraWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)の発効によって強制又は任意規格を作成、改正する場合は国際規格(ISO/IEC等)を基礎とすることが義務づけられた。
一方、経済のグローバル化に伴い、企業の国際競争力確保(市場獲得)や企業活動発展のために国際規格が一つのツールとなることから、多数の技術分野にて国際標準獲得のための熾烈な争いが続いている。日本に関連した代表例としてJRの”Suica“、無線LAN規格、時計用の蓄光塗料、コンデンサが挙げられる。
このように国際規格の重要性は、高まる状況にあり、ビジネスにおいて国際標準を獲得することは、利益を確保するうえで重要であり、標準・知的財産・経営戦略と一体的に推進することが重要である。 経済産業省では、国際標準化の推進、発展のために“国際標準化戦略目標”及び“国際標準化アクションプラン”を作成し、日本工業標準調査会(JISC)で議決を経て策定されたところである。これに基づき、国際標準化活動推進のための人材育成や教育の充実、内閣総理大臣賞の創設など、官民挙げての体制作りを推進しているところである。また、組織の社会的責任(SR)と事業継続計画(BCP)に関わる国際標準化についても積極的に取組んでいくことにしている。      

テーマ2.船舶技術分野における標準化の現状について
(国際標準化アクションプランの内容と新JIS マーク制度の現状)
木越 尚之 氏 国土交通省海事局舶用工業課 技術係長


【講演の主旨】
sora船舶技術分野における国際標準化活動は、主にISO/TC8(船舶及び海洋技術専門委員会)、ISO/TC188(スモールクラフト専門委員会)、IEC/TC18(船用電気設備及び移動式海洋構造物の電気設備専門委員会)にて世界の海事産業の参加、審議並びにIMO(国際海事機関)と関連しつつ、国際規格が策定されている。 一方、日本では日本工業標準調査会(JISC)が窓口となって、国土交通省海事局と連絡を取りながら主に上記のISO/IECのTCについて船舶技術研究協会で国際規格の審議、提案のための活動を国内関係者(船主、造船所、舶用機器製造業者等)の協力のもと進めている。
テーマ1の“国際標準化アクションプラン”を策定に関連して、船舶技術分野に関わる国際標準化アクションプランが2007年に策定された。この中でIMO作成又は審議中の安全・環境に関わる国際条約、技術基準に関連した事項を取り扱うISO/TC8及び傘下のSC(分科委員会)として救命・防火(SC1)、海洋環境保護(SC2)、機械及び配管(SC3)、航海(SC6)、IEC/TC18を重点TCとして選出し、国際標準化活動に取組んでいくこととしている。

主な内容は、

-船舶からのGHG(温室効果ガス)の排出量算定基準の提案(TC8/SC2)
-防汚塗装の環境影響評価方法の提案(TC8/SC2)
-ISO 8728 ジャイロコンパスの改正提案(TC8/SC6)
-ISC/TC18とTC8/SC3で審議中の陸電装置

などがある。これらの事項については、船技協設置している審議のための分科会組織等において関係者と連絡を取りつつ進めることとしている。
 次に、新JIS マーク制度の現状については、平成18年1月から登録認証機関によるJIS マーク認証を既に開始している。旧制度は国際的な認証制度との整合化に留意し、工場認証から製品認証へと改めている。既に6社程度が認証取得済みである。 旧制度による認定工場は、平成20年9月末まで有効であるが、それ以降に旧JIS マークの表示を行うと違反になるので、注意されたい。

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森野氏の講演の様子
木越氏の講演の様子

テーマ3.JIS管フランジ規格のISO化とフランジ締結技術の国際動向について
澤 俊行 氏  広島大学 大学院工学研究科 教授


【講演の主旨】
  (社)日本機械学会のISO/TC5/SC10(管フランジ)国内対策委員会にて議長を勤め長年にわたりJIS フランジのISO提案を手がけてきた。世界はもはや規格戦争状態であり、輸出/輸入などを例に見えないところで規格によって制約を受ける状況となっている。特に欧米諸国においては日本よりもはるかに昔から国際標準化を重要視し、積極的にISO/IECの活動に関わってきた。 特に欧米ではコード技術者が昔から養成され、日本とは異なり企業内において標準化業務を行う者は丁重に扱われてきた。また、企業又はユーザーが規格の有効性や重要性を熟知したうえで自らのために規格を作り上げている。JIS 管フランジのISO化に当たり各国を歴訪した際、日本との標準化に対する考え方や根本的な物事への考えかたの違いに驚かされたことを記憶している。
 管フランジの国際規格は、北米(ASME/ANSI)と欧州(DIN:ドイツ)の2本立ての規定で構成されている。 JISフランジは、DIN、ASMEと同等の生産量がアジア地域であり、現行のISO規格にJIS管フランジが規定されていないことは、上記のそれぞれのタイプのフランジのはめあい等に互換性がないことによって生じる生産者、使用者に対しての不便さだけでなく、産業界の発展の阻害になる可能性がある。 ISOへの提案の結果、フランスを筆頭に一部のEU諸国からの強烈な反対があったが、EU諸国やアジア諸国の歴訪による根回しや国内対策委員会メンバーの協力と努力によってFDIS(最終国際規格案)投票終了まで辿り着くことができた。 規格という数枚の技術文書であるが、その裏には規格には規定されない幾つもの技術的な事項が隠されており、管フランジに関してはフランジ締付け技術があり、日本国内において関係のメーカーや専門家、船技協関係者を集めて研究・開発のための検討会を実施している。 特に最近では軽量化を意識したコンパクトフランジやフランジの新ボルト締付け法について研究開発の最終成果として規格化のための審議を行っているところである。 引続きこれらの展開に参加者の皆様が注視頂ければ幸いです。

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澤教授の講演の様子

テーマ4.舟艇工業における標準化活動について
[小型舟艇に対するISO規格の研究と国内規格(JIS F)の現状]
坂元 謙介 氏 (一財)日本船舶技術研究協会 舟艇分科会 副分科会長


【講演の主旨】
 小型舟艇に関する国際標準の策定はISO/TC188(スモールクラフト専門委員会)で実施している。この組織は1985年にTC8から独立して設立した。主要メンバーはEU諸国、アメリカ、日本、オーストラリア、韓国、中国などである。日本は設立当初から国際会議に出席し、日本の国内対応委員会も同時期に設立し、国際規格の検討並びに国内規格(JIS F)の原案作成作業を行った。 現在約82規格が国際規格として制定されている。一方日本の国内規格JIS F規格は53規格となっている。 主な国際規格は、復原性、船体構造(スカントリング)、機関の出力測定などである。
 小型舟艇のISO規格策定の特徴は、EU市場統合に当たっての基準認証制度や商取引においてEN規格を活用することとなり、ISO規格を採用することとしたためTC188にて規格策定が行われた。 国際規格の内容は工業標準の枠を超え、安全基準に関する事項に及んでいる。 また、WTO/TBT協定と相まってIMO規則や国際条約とは別に国際的な舟艇の安全基準として機能することとなり、日本の小型船舶の取引や安全基準に影響を与えている。 日本は、TC188に設立当初から数々の提案を行っている。日本の提案が十分に受け入れられた規格と受け入れられなかった規格があった。
 主な規格としては、ISO 8665(内燃機関の出力測定)、ISO 13590(PWC:水上オートバイ)、ISO/DIS 12215-8(スカントリング-舵)が受け入れられた規格の代表といえる。
 引続きTC188の国際標準化活動に参加し、安全性基準に関する船体構造(スカントリング)や復原性については、国の関係者と連絡を取りつつ提案、審議を進めて行く予定である。

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坂元氏の講演の様子

テーマ5.航海計器分野における標準化活動について
山田 秀光 氏 株式会社トキメック 取締役 執行役員


【講演の主旨】
 航海計器には、レーダ、HCS(船首方位制御装置)、ECDIS(電子海図情報表示システム)などがあり、船舶に搭載されている。 船舶への搭載要件や基本的な仕様はIMOで性能基準が策定され、規定の条件を満たした後SOLAS条約として発効される。 最近は条約発効までの期間が短縮傾向にあり、製造者にとって苦労が増えているようである。また、従来は市場に普及している製品をベースに国際規格が検討されていたが、最近では普及前に検討されるケースがある。例としては、AIS(船舶自動識別装置)やVDR(航海情報記録装置)がある。国際規格及び基準の審議には、船技協とJEITA(電子技術産業協会)などがある。
 日本からの国際規格の提案は、オートパイロット(HCS)があり、欧米との競合もあったが、日本製品も対応可能な規格とすることができた。VDRは、航空機のBlack Boxメーカーが主体となり国際提案がなされたために深海での耐浸水性が規定されたため製造者にとって非常に厳しい規定となってしまった。
 最近の航海計器は、機器単体で使われることが少なくなりシステム化(パッケージ化)に各国とも注力している。 

国際基準及び国際規格に対する個人的な感想は、

-国際規格を無視して商売ができない。
-欧米との人脈作りが重要である。 
-欧米はシステム施行が強く、規格戦略に長けている。

などがあげられます。 日本も戦略的に考える必要があると考えます

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山田氏の講演の様子
 
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舶用品標準化推進協議会/舶用品標準化セミナー全景

セミナー開催にあたり、多大なご支援・ご協力を頂きました日本財団をはじめとして関係各団体、ご講演者様及びご来聴いただいた皆様へ改めて厚く御礼申し上げます。 


 また、セミナー当日に、ご参加頂いた方々から戴きましたアンケーを集計いたしました。以下のとおり掲載致します。今回戴きましたご意見は、当協会に取りましては大変有益なものであり、今後の調査研究に反映させていきたいと考えております。
 ご協力誠に有り難うございました。

[アンケート結果]

-参加者数- 50名(以下内訳)
①舶用品標準化推進協議会メンバー:37名
②上記以外の製造業者、造船会社 : 2名
③関係官庁、団体、研究所、大学等 : 1名

-回答数-  21名

1.本日の内容について、ご意見、ご感想をお聞かせください。
・標準化に関する最新情報がバランスよく構成されており大変分かりやすい
・他業種の活動が聞けて又、異なるアプローチがあり興味深かった。
・船用品業界の現状が理解できた、他の業界と同様に問題点が多いことがわかった。
・興味深い内容で勉強になった
・国際化への現状、問題がわかり有意義でした
・非常に参考になりました
・音がひびいて少し聞き取りにくかった
・世界を相手にして日本が生き抜くには規格作りがいかに大変であるかがわかった
・世界で通用する標準専門家の育成が急がれる。このためには、大学にこれに該当する学科を設置すべきである
・フランジについてISOにぜひとも入れてもらえる様、最大限の努力をお願い致します
・規格というものの認識を新たにしました
・国際規格が有るのが分かったし、国際規格(国際標準)の必要性が分かって良かった
・管フランジのISO化は各国の利害があり、難しいとは思われるが、ISO化は必要と思う
・国際規格の重要性、危機感が理解出来た
・標準化機関、規格実例がミックスされたテーマで興味深く、セミナーを受講することが出来ました、次回セミナーを開催される時は受講したいと思う
・規格作りにご尽力頂いている皆様のご苦労振りが良く理解できました
・フランジの例で理解出来たが、標準化、規格化が各国の利害が衝突する場であることに驚いた
・JIS・ISOの最新を聞く機会ができ、非常に参考になった、特にISOに対する日本の立場
・官庁方針の情報が入手でき有意義であった
・規格は戦争であり、それに勝利することが企業の利益に直結することが良く分かった

2.今後の舶用品標準化推進協議会へのご意見、ご要望、ご提案をお聞かせ下さい。
・澤先生の解説「JIS管フランジ規格~国際動向」のように、制定経緯をまとめておくと今 後の参考にな ると思います
・常に問題点を議論できる場を設けていただきたい
・頻繁に情報を提供して頂けると有難い
・協議会主導権で標準化教育活動(講演会の開催等)を行い、標準専門家の育成を行う
・当業界の標準・規格が国際規格に反映される様に今後ともよろしくお願い致します
・受注隻数が増えている中国が独自の規格やヨーロッパの規格を取り入れない様に協調して行くことが必要ではないかと思う
・最新の情報等を今回と同様に知らせて頂きたい。得られた情報を活用し、協力していければと考えています
・適宜、情報の開示を頂き、見える活動にしていただけるようにお願いします
・戦略を練る場が協議会と考えます。年間どの位の規格制定に係り、日本の意見がどの位採用されたのかのレポートを出し、経営陣の目をさますのが良いと思います

3.今後、舶用品標準化推進協議会/標準化セミナーで取り上げてほしいテーマがあればお聞かせ下さい。
・今回のような活動実地の話が良い
・机上、座学に限らず見学会、体験会などを含めていただく内容が充実するように感じます
・本日のような事例、特に規格化がうまくいったもの、いかなかったものの対比が良い
・規格化の活動報告(課題と対応など)は戦略の重要性を認識していただく上で有効なものであり、講演会で多く取り上げるべきと思います
・今回JIS管フランジのISO化と同様、代船舶関連JIS規格をISO化された、もしくはしている規格に関するセミナーを希望する。今回のセミナーが大変おもしろくて技術向上が図れたため
・船用品標準化協議会全体としての戦略プランをご教授お願いしたい(製品分野毎でもよいです)
・日本の意見を採用してもらうための活動のノウハウ(データの示し方等)がわかる

4.その他、本会に対するご意見・ご要望などあればお聞かせ下さい。
・異業種分野(船用以外)の標準化団体との交流なども参考になると思います
・国際化にあたり、経済産業省、国交省殿間でタテワリにならぬよう尽力頂きたい

 舶用品標準化推進協議会は、今回第1回目の開催を皮切りに、引続き第2回、第3回と回数を重ねていく予定でございます。 皆様のご協力のもと舶用品のみならず船舶技術分野におる標準化活動が活発化し、関係各位の日頃の活動の一助となることを望んでおります。次回開催時におかれましても貴重なご意見を戴けますよう、宜しくお願い申し上げます。


<本件に関する問い合わせ>
財団法人sora日本船舶技術研究協会
基準・規格グループsora標準化チームsora冨永 恵仁
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