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IMO会議報告

~IMO第50回復原性・満載喫水線・漁船安全小委員会(SLF50)結果報告~

4月30日から5月4日まで、英国ロンドンにおいて開催された第50回復原性・満載喫水線・漁船安全小委員会(SLF50)が開催されました。その主要な審議結果は以下のとおりです。

【概要】
1.非損傷時復原性コード(ISコード)
これまで非損傷時の船舶の復原性基準(ISコード)は非強制の勧告であったが、6年間の審議を経て今次会合において、強制化するための改正案がまとまった。このISコードは24m以上の旅客船及び貨物船に強制化することとし、本年10月開催予定の83回海上安全委員会(MSC83)で承認され、最短では2009年末に発効する予定である。(ただし、漁船、コンテナ船等船種ごとの基準の一部は非強制)
強制化される改正案はこれまでの勧告ベースのものと基準や適用範囲に大きな変更はなく、船舶設計への影響は限定的と考えられる

2. 旅客船の損傷時における推進能力等の維持
昨年12月開催のMSC82において採択された旅客船の損傷時の推進能力等の維持に関する規定中の「いかなる1区画が浸水した場合」を明確化する解説文書を作成した。規則の対象となる旅客船(2010年7月以降の建造で一定の要件に該当するもの)は推進能力や操舵といったシステムを二重化する必要があり、船舶設計に一層の工夫が必要となる。

3.損傷時の旅客船が安全に帰港するための復原性要件
今次会合において、今後の方向性について議論され、2008年開催のSLF51までの間、コレスポンデンスグループ(メールベースの検討)で検討することとなった。

4. トン数の船舶設計及び安全に与える影響
トン数について、新トン数制度の条約への導入の必要性等が中長期的課題として検討された。今後の審議の方向は未定であるが、条約改正は船主、船舶設計等各方面への影響が大きいことから注視していく必要がある。

5.その他
・次回SLF5120087月開催予定。

【解説】
1.非損傷時復原性コード(ISコード)
(1)ISコード強制化へ
・これまで、非損傷時の船舶の復原性基準(ISコード)は非強制の勧告であったが、6年間の審議を経て今次会合において、ISコードの改正案とそれを強制化するための条約改正案がまとまった。
ISコード改正の内容は、ISコードを再構成し、現コードをPart A(強制部)、Part B(勧告とガイドライン)、Part C(解説)の3部、および付属書に組み替えるもの。
Part A(強制部)
GZ曲線の基準(総会決議A.167基準として知られていた経験則)とウエザークライテリオン(我が国のC係数基準をベースとした半経験則)等が、ISコード2008 PartAとして、長さ24m以上の旅客船・貨物船に対して強制化される予定である(別紙参照)。
その中で、最大復原力角が25度以上で生じるという要件を双胴船等の幅広船型では一般に満たすことができないことについて検討が行われ、我が国等がいくつかの解決策を持ち寄った結果、最終的に最大復原力角が小さい場合はそこまでの動復原力が標準より大きいことで基準を満足するとみなすことができることとなった。
・Part B(勧告とガイドライン)
現在のISコードに含まれている漁船やコンテナ船基準(船長200m以上)等のいくつかの船種ごとの基準は、Part B(非強制要件)として設定された。
・スケジュール
ISコードの改正案は、本年10月開催予定の第83回海上安全委員会(MSC83)に承認のために提出される。詳細なスケジュールは未定であるが最短では来年のMSC84で採択され1年半後の2009年末に発効する見通しである。
・なお、強制化される改正案はこれまでの勧告ベースのものと基準や適用範囲に大きな変更はなく、船舶設計に与える影響は限定的なものと考えられる。

(2)数値シミュレーション等直接評価(性能ベース)による代替基準の検討開始
従来の経験則や半経験則に基づく基準を強制化する場合の問題は、新形式船への適用が難しく、そのような船舶の開発をむしろ阻害しかねないことである。この問題の解決のため、物理現象に即した基準(性能ベース基準)が求められるに至った。これに応えるべく我が国は、このような基準のあり方についてこれまで継続的に提言を行いIMOの議論を主導してきた。
我が国の提言について、米国が強く賛同し、今次会合では、日本・米国・オランダが共同で性能ベース基準の枠組みの提案を行った。一方、ドイツも数値シミュレーションの結果にもとづく経験則案を提案したが、イタリア、ポーランド、ノルウェーなど圧倒的多数の国が日米蘭の案を支持し、これを今後の作業の基礎とすることが決まった。すなわち、操船不能状態での復原性、パラメトリック横揺れ、追波中復原力喪失、ブローチングについての簡易な基準で問題があると判定された船については、数値シミュレーションなどの直接評価を現行基準の代用として利用可能にしようとするものである。この性能ベースの基準の策定のため2008年より2010年まで審議が行われる予定である。

2.旅客船の損傷時における推進能力等の維持
昨年12月に開催された第82回海上安全委員会(MSC82)において、旅客船の総合的な安全強化策としてSOLAS条約第II-1章第8-1規則注)(旅客船の損傷時におけるシステム維持)を追加する改正が採択されたが、同規定中に用いられている「いかなる1区画が浸水した場合であっても」という言葉を明確化するための解説を作成することがSLF小委員会に指示された。
今次会合において検討を行ったところ、次の内容が合意された。
○区画とは、船内の水密隔壁で仕切られた空間である。
○本規則の目的は、限定された範囲のいかなる浸水があっても船が動かなくなることがないようにすることである。
○どのように浸水が生じるかに関わらず、この原則は適用される。隔壁甲板よりも下の浸水だけを考えればよい。
また、この解説と併せて、・第8-1規則は、システムの冗長性を確保するためだけに作られたものであり規則構成上SOLAS条約第II-1B-1部(復原性)に含まれることは論理的ではないこと、及び、・損傷時に安全に帰港するための復原性要件はこの規則とは別に作成され得ることが合意された。
これにより、規制の対象となる旅客船(2010年7月以降の建造で一定の要件に該当するもの:下記参照)は推進能力や操舵といったシステムを二重化する必要があり、船舶設計に一層の工夫が必要となる。
       
注)SOLAS条約第II-1章第8-1規則が規定している内容
2010年7月1日以降に建造され、3以上の主垂直区域を有する又は長さ120m以上の 客船は、いかなる1区画が浸水した場合であっても、推進能力、操舵、固定式消火装 置等のシステムが機能するよう設計されなければならない

3. 損傷時の旅客船が安全に帰港するための復原性要件
上記2.に関連し、MSC82において旅客船の損傷時におけるシステム維持要件を審議した際、併せて損傷時の安全な帰港に関する復原性要件の審議も行ったが、この要件については各国の意見が収束せず、本小委員会に改めて検討を行うよう指示されていた。
今次会合において、今後の検討の方向性についての審議を行ったところ、以下の内容について次回SLF51までの間にコレスポンデンスグループにより検討を行うこととなった。
○積付条件、ヒール/トリムの限界等を決めて、自航又は曳航での安全な帰港のための設計要件及び損傷時復原性要件案を作成する。
○自航又は曳航での安全な帰港のための船長への運航に関するガイドライン案を作成する。

4. トン数の船舶設計及び安全に与える影響
オープントップコンテナ船のように、他のタイプの船と比べ大乾舷を有し安全が高いにも関わらずトン数が大きくなるため経済的不利益を被っている船があること等を考慮して、現存の総トン数、純トン数は残しつつ新たに登録トン数(LxBxd)をトン数条約に創設する提案が審議された。
審議の結果、(1)トン数条約を改正して登録トン数を導入する場合と(2)条約改正の外で登録トン数を取り扱う場合のメリット・デメリットを整理することとなり、コレスポンデンスグループを新たに設置してSLF51までに検討することとなった。
審議の方向は未定であるが、条約が改正される場合には船主、船舶設計等各方面への影響が大きいことから注視していく必要がある。






以上

●本件に関するお問い合せ先
(財)日本船舶技術研究協会 基準・規格グループ 貴島
TEL:0303-3502-2277
FAX:03-3504-2350

e-mail:
kijima@jstra.jp

 
 


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