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IMO会議報告

IMO第53回航行安全小委員会(NAV53)結果報告~

7月23日より27日までの間、ロンドンにおいて第53回航行安全小委員会(NAV53)が開催されました。主な審議結果は、以下のとおりです。

【今回最終化し、第83回海上安全委員会(MSC83)に上程される主なもの】

・統合化航法システム(INS)の性能基準(→2①)

・航海灯、航海灯制御器及び関連装置の性能基準(→4)

・レーダーの搭載ガイドライン(→5)

1.E-Navigation戦略

E-Navigation戦略の策定については、昨年7月のNAV52から具体的検討が開始され、メールでのやり取りを中心とするコレスポンデンス・グループ(CG)で検討が進められてきた。今回の会合では、CGからの報告を基に、E-Navigationの定義、主要な目的等が合意され、次回NAV54での審議に向け、今後引き続きCGにて、ユーザニーズを明確化した上で更なる検討を進めていくこととなった。

2.INS・IBSの性能基準

主な審議結果は以下のとおり。
「統合化航法システム(INS)の性能基準」の見直しについては最終化され、2011年1月1日から搭載されるシステムに適用すべく、今年10月の第83回海上安全委員会(MSC83)へ採択のために送られることとなった。

「統合化船橋システム(IBS)の性能基準」の見直しについては、具体的な審議に至らず、作業終了目標年を2年延長し、2010年までに最終化すべく検討を進めていくことで合意された。

3. ECDISの搭載義務化

電子海図情報表示装置(ECDIS)の搭載の義務化については、昨年のNAV52から審議が開始され、今回は推進派の北欧諸国が共同で、費用対効果分析に基づき具体的に適用船舶の範囲及び適用時期(2010年7月から段階的に適用)を提案したが、時期尚早とする意見と推進する意見等との間で議論は紛糾し、合意に至らず、来年のNAV54において引き続き検討が進められることとなった。

4.航海灯、航海灯制御器及び関連装置の性能基準

前回NAV52において、ノルウェー及びデンマークから性能基準案が提案されていた。今回の会合においては、我が国から①今後の航海灯のLED化等を踏まえた特例要件、②小型船舶への「航海灯の二重化」要件の適用除外、等を含む性能基準案の修正提案をしたところ、合意され、MSC83で採択のために送られることとなった。なお、航海灯の二重化の要件については、我が国が「長さ50m以上の船舶」への適用を提案し、合意された。

5.レーダーの搭載ガイドライン

NAV52にノルウェーが草案を提案し、今回ドイツが発展させて提案した「レーダーの搭載ガイドライン」については、今次会合でサーキュラー案として最終化が行われ、MSC83に承認のために送られることとなった。

6.航海当直警報システムの搭載要件

航海当直警報システム(BNWAS)については、デンマークが、現存船も含め、全ての旅客船と150GT以上の貨物船にBNWASを搭載する提案をしたが、合意に至らず、引き続き次回NAV54で検討されることとなった。

【解説】

1.E-Navigation戦略

MSC81において、英国、我が国等の提案により、既存の様々な航行上の通信技術やサービスと新技術を適切に融合した、全世界で全ての船舶が利用しうる正確、確実かつ費用対効果のあるシステムを導入していくための幅広い戦略的ビジョンを作成することを提案し、検討が開始された。

NAV52においては、E-Navigation戦略策定対応のコレスポンデンス・グループ(CG)設立され、今回の会合までに国際航路標識協会(IALA)等からの提案を中心に検討が進められてきた。我が国としては、ヒューマンエラーに起因する海難防止に資する航行支援システムの導入をE-Navigation戦略の一つの柱として位置づけるべく、(財)日本船舶技術研究協会の「航海支援に係る基準に関する調査研究プロジェクト」において対応策を検討し、CGに対して様々の提案を行ってきている。

今回の会合では、CGの報告を基に、以下に示すE-Navigationの定義や主要な目的等が合意された。ユーザニーズに基づいたものとすべきてあるとの意見が多数出たため、今後は、E-Navigationにおけるユーザニーズの明確化を行った上で更なる検討をCGが行い次回COMSAR12及びNAV54に報告されることとなった。

「E-Navigationとは、海上における安全と保安及び海洋環境保護のため、桟橋から桟橋までの航行と関連サービスを向上させる電子手段を用いた、船上及び陸上の海事情報の調和した収集、統合、交換、表示及び分析」

なお、我が国からは、上記プロジェクトで実施した、海難事故解析によるE-Navigationに求められる機能の特定に関する文書を提出し、その手法と衝突事故を対象とした解析結果の紹介をしたところ、その有用性が認められ、今後、E-Navigationにおけるユーザニーズを明確化する際に考慮されることとなった。

2.INS・IBSの性能基準の見直し

統合化航法システム(INS)及び統合化船橋システム(IBS)の性能基準の見直しについては、2004年のMSC74で決定され、2005年のNAV51において実質的な検討が開始され、まずは、INSの性能基準の見直しから開始し、IBSの性能基準に入ることが合意された。また、警報管理システム(AMS)についても含めて検討することとされた。その後、NAV52では、各種機器やセンサーの性能基準を自由にINSの性能基準と統合し得るようモジュールの形式で各機器の性能基準を作成することで合意し、CG、中間会合等での検討を経て、今回の会合に至っている。

今回の会合では、INSの性能基準で未決着となっていた部分について審議された他、今回の審議で新たに提案された、INS基準の一部のみを満たす場合(例えばEGDISとトラックコントロールの組み合わせ)の取り扱いについても検討を行ったが、時間的制約から決着がつかず、INS全体の性能基準として合意された。また、SOLAS条約第15規則(船橋設計等に係る原則)のINS・IBS等への適用に関するガイドラインが、サーキュラー案として最終化され、MSC83へ承認のために送られることとなった。

一方、IBSについては、現状のIBSの性能基準は適用困難であることが確認され、新たにガイドラインとして作成しなおすことに合意した。また、CGから提案された含めるべき事項リストについては、具体的な検討には至らなかった。なお、今年が最終化の予定であったが、作業が遅れたことから2010年までの延長をMSC83に求めることとなった。

3.ECDISの搭載義務化

電子海図情報表示装置(ECDIS)の搭載の義務化については、昨年5月に開催されたMSC81で検討を開始することを合意し、昨年7月に開催されたNAV52から審議が開始された。NAV52では、デンマーク及びノルウェーからの搭載義務化提案に対して、我が国が、電子海図情報(ENC)が作成されている割合(カバレッジ)が十分なければ、費用対効果が現れないとする費用対効果分析(FSA)の結果を提示し、ECDISの義務化時期については、ENCの動向と調和させるべきとの提案を行い、多くの支持を受けていた。

今回の会合では、デンマーク、フィンランド、ノルウェー及びスウェーデンが、ENCのカバレッジを踏まえたECDIS搭載に係る新たなFSAの結果を提出し、それに基づき、500GT以上の旅客船及びタンカー並びに3,000GT以上のタンカー以外の貨物船に対し、2010年7月から段階的にECDISを搭載することを義務化するSOLAS第V章19規則の改正案を提案した。一方、我が国からは、ECDISの搭載は、10,000 GT以上の船舶を対象とし、現存船への適用は新造船への適用から3年~5年遅らせる猶予期間を設け、2年以内に廃船する船舶は適用を除外すべきことを提案した。また、国際水路機関(IHO)からは、ENCのカバレッジは2010年までに改善される見込みであること、及びIMOで搭載を義務化することによりENCの作成を後押しする旨の情報が提供された。

審議では、ECDIS搭載の義務化の決定がENCの作成を促進させるとして、2010年からのECDIS搭載義務化を決定すべきと主張する国がある一方で、将来的には義務化すべきではあるものの、ENCのカバレッジの改善見込みには不確実性があり、現時点では、特定の時期からの義務化を決定すべきでないと主張する国もあり、来年開催されるNAV54において引き続き検討することとなった。なお、ECDISの搭載を義務化した場合であっても、引き続き紙の海図を持つことは必要との意見が多かったが、紙の海図と電子海図の両方のメンテナンスを船主に求めることは過大な負担との意見もあった。

4.航海灯、航海灯制御器及び関連装置の性能基準

2005年5月に開催されたMSC80において、世界的に統一された航海灯制御器等の性能基準を作成すべきとのノルウェー提案が支持され、昨年7月に開催されたNAV52から検討が開始された。NAV 52では、ノルウェー及びデンマークから性能基準案が提出され、我が国は、LED航海灯の特性を踏まえた性能要件にすべきことを主張し、概ね受け入れられた。

一方、国際船級協会連合(IACS)から、1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREG条約)第23(a)規則について、マスト灯、舷灯及び船尾灯は二重化されていることが必要との統一解釈案がNAV52に提出され、我が国の反対にも関わらず、この解釈案が本小委員会からMSC82に提出された。この解釈によれば、船舶に既に備え付けられているものや小型船も含めて全ての船舶のマスト灯、舷灯及び船尾灯の二重化が要求されることから、我が国は、MSC82においても反対し、その結果、NAV53にて再検討することが指示されていた。

今回の会合では、NAV52の結果を踏まえて、我が国から、①LED光源の特殊性を踏まえた特別規定(明るさの計測又は一定期間での交換)、②一定以上の大きさの船舶のマスト灯、舷灯及び船尾灯の二重化、③配光試験基準の統一等を盛り込んだ航海灯及び航海灯制御装置の性能要件案を提出した。

審議の結果、我が国が提示した性能基準案を一部修正の上で合意し、MSC83に採択を求めることとなった。この中で、マスト灯、舷灯及び船尾灯の二重化は、長さ50m以上の船舶に要求されることで合意された。この性能基準は、MSC83で決定される日(現案では2009年1月1日)以降に船舶に搭載される航海灯、航海灯制御器等に適用される予定。

5.レーダーの搭載ガイドライン

2005年5月に開催されたMSC80において、ノルウェーが適切なレーダーの設置がその性能を発揮させるためには重要であるとしてガイドラインの作成を提案し、NAV52において検討が開始された。NAV52ではノルウェーが草案を提案し、今回ドイツがそれを基にさらに発展させたガイドライン案を提案していた。メーカ、設置者、造船所の誰に対する要件なのかなどを中心に議論が行われ、「アンテナを搭載するプラットホームの振動が規格に適合する旨を記載した宣言書の作成を造船所に求める要件」を「規格を考慮した設計とする要件」に変更するなどの修正を行った上で合意された。本ガイドラインは、サーキュラー案として、MSC83に承認のために送られることとなった。

6.航海当直警報システムの搭載要件

航海当直警報システム(Bridge Navigational Watch Alarm System)とは、居眠り等の当直者の異常を感知した場合、船長室等に警報を転送することにより、事故を防ぐためのシステムであり、既に性能基準が決議MSC.128(75)で定められているものの、条約上、搭載要件は規定されていない。MSC 81において、デンマークとバハマの搭載義務付けを検討することが提案され、今回から実質的な審議が開始された。

今回の会合では、国内で発生した事故をきっかけに自国籍船舶に対して同装置の搭載を義務付けしているデンマークが、BNWAS利用者に対して行ったアンケート調査の結果を添えて、現存船も含め、全ての旅客船と150GT以上の貨物船にBNWASを搭載すべくSOLAS第V章第19規則の改正を提案した。また、我が国は居眠りによる海難についての統計を情報提供した。

デンマークの提案に対して多くの国から賛成意見が出されたが、150GT以上の船舶にすることが適当なのかどうかについて検討を要するとのコメントもいくつかの国からあった。我が国は、500GT未満の船舶に対しては、現在の性能基準は現実的ではないとの意見を表明した。

その他、BNWASの搭載は船員の配乗に影響を及ぼすものではないことを明確にすべきとの意見や、船員の疲労を増す現在の一定時間ごとにボタンを押す方式ではなくセンサー式のものを導入すべきとの意見もあり、これらを踏まえ、次回NAV54にて検討を継続することとなった。

以上

●本件に関するお問い合せ先
(財)日本船舶技術研究協会 基準・規格グループ 今井
TEL:03-3502-2277 FAX:03-3504-2350
e-mail:imai@jstra.jp

 
 


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